ベルヌーイ分布から二項分布を定義する

命題

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う $n$ 個の独立な確率変数を $X_1$ $\ldots$ $X_n$ とする.

確率変数の和 $X_1 + \ldots + X_n$ は二項分布 $B(n,p)$ に従う.

逆に, 二項分布に従う確率変数 $X$ は, $n$ 個の独立なベルヌーイ分布に従う確率変数の和として表すことができる.

$X=X_1 + \ldots + X_n$.

※ $0 \leqq r \leqq n$ について, $P(X_1 + \ldots + X_n = r)$ $={}_n\mathrm{C}_rp^r(1-p)^{n-r}$ である.

証明.

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う独立な確率変数 $X_1$ $\ldots$ $X_n$ の和 $X_1 + \ldots + X_n$ と, 二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ が等しいことを示す.

ベルヌーイ分布に従う確率分布

$X_r$$0$$1$
確率$1-p$$p$$1$

■ 確率変数の和が二項分布に従うこと;

$1 \leqq r \leqq n$ について, $X_1 + \ldots + X_n=r$ とする. この方程式の解は

$(X_1,\ldots, X_r, X_{r+1}, \ldots, X_n)$ $=(1, \cdots, 1, 0, \cdots, 0)$

をはじめ, $n$ 個のうち $r$ 個の確率変数が $1$ を返している状況を表す. これらの解は ${}_n \mathrm{C}_r$ 個だけ存在して, おのおのが起こる確率は確率変数の独立性より $p^r(1-p)^{n-r}$ である.

ゆえに,

$P(X_1 + \ldots + X_n=r)$ $={}_n \mathrm{C}_r p^r(1-p)^{n-r}$

であり, この確率変数は二項分布 $B(n,p)$ に従っていることが分かる.

■ 二項分布に従う確率変数がベルヌーイ分布に従う確率変数の和で表せること;

$1 \leqq i \leqq n$ について, $n$ 回の試行のうち, $i$ 回目の試行の成功の可否を表す確率変数 $X_i$ を

・成功した場合 $X_i=1$,
・失敗した場合 $X_i = 0$

と定める. これは $B(1,p)$ に従う確率変数である.

$1 \leqq i,j \leqq n$ について, 二項分布の $i$ 回目の試行と $j$ 回目の試行は互いに影響しないので, $X_i$ と $X_j$ は独立である.

これらの和 $X_1 + \ldots + X_n$ は前述の通り, $B(n,p)$ に従う確率変数となる..

ゆえに, $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ は, $n$ 個の独立なベルヌーイ分布に従う確率変数の和として表すことができる.

例えば, $n=2$ のとき

$X_1, X_2$$0$$1$
$0$$(1-p)^2$$(1-p)p$$1-p$
$1$$p(1-p)$$p^2$$p$
$1-p$$p$$1$

$X_1 + X_2=2$ のときは, $(X_1, X_2)$ $=(1,1)$ のときのみであり確率は $p^2$ である。

$X_1 + X_2=1$ のときは, $(X_1, X_2)$ $=(1,0)$, $(0,1)$ であるから確率は $2p(1-p)$ である。

$X_1 + X_2=0$ のときは, $(X_1, X_2)$ $=(0,0)$ のときのみであり確率は $(1-p)^2$ である。

したがって, $X_1 + X_2$ は二項分布 $B(2,p)$ に従っています。

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