点と直線の距離の公式の証明【正射影ベクトルの利用】
公式(点と直線の距離)
点 $\mathrm{P}(x_0, y_0)$ と直線 $\ell: ax+by+c=0$ の距離 $d$ は次の通り:
$$d = \frac{|ax_0 + by_0 + c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$

点と直線の距離の公式を, 正射影ベクトルの考え方を使って証明してみよう。
証明.
点 $\mathrm{P}$ から直線 $\ell$ に下した垂線の足を $\mathrm{H}$ とする. 直線 $\ell$ 上で点 $\mathrm{H}$ 以外の点 $\mathrm{Q}(x_1, y_1)$ を取って, $$\overrightarrow{\mathrm{PQ}} = (x_1 - x_0, y_1-y_0)$$ を考える. このベクトルの $\overrightarrow{\mathrm{PH}}$ 方向への正射影ベクトルの大きさが点 $\mathrm{P}$ と直線 $\ell$ の距離 $d$ に対応する.

$\overrightarrow{\mathrm{PH}}$ 方向のベクトルの1つとして, 直線 $\ell$ の法線ベクトル $\vec{n} = (a,b)$ をとる.
直線 $ax+by+c = 0$ の法線ベクトルの1つは $\vec{n} = (a,b)$ である.
$\overrightarrow{\mathrm{PQ}}$ の $\vec{n}$ 方向への正射影ベクトルは
$$\frac{\overrightarrow{\mathrm{PQ}} \cdot \vec{n}}{|\vec{n}|^2} \vec{n}$$
である. このベクトルの大きさが $d$ である. 実際に大きさを計算すると,
$$\left|\frac{\overrightarrow{\mathrm{PQ}} \cdot \vec{n}}{|\vec{n}|^2} \vec{n} \right| = \frac{|\overrightarrow{\mathrm{PQ}} \cdot \vec{n}|}{|\vec{n}|^2} \cdot |\vec{n}| = \frac{|\overrightarrow{\mathrm{PQ}} \cdot \vec{n}|}{|\vec{n}|}$$
である. それぞれのベクトルを成分表示して計算すると,
$$\frac{|\overrightarrow{\mathrm{PQ}} \cdot \vec{n}|}{|\vec{n}|} = \frac{|a(x_1-x_0)+b(y_1-y_0)|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$
となる. ここで, 点 $\mathrm{Q}(x_1, y_1)$ が直線 $\ell$ 上にあることから, $$ax_1 + by_1 + c = 0$$ が成り立ち, $-c=ax_1 + by_1$ を得る. ゆえに, $$\frac{|\overrightarrow{\mathrm{PQ}} \cdot \vec{n}|}{|\vec{n}|} = \frac{|-ax_0-by_0-c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$ とできる. このベクトルの大きさが $d$ であったから,
$$d = \frac{|ax_0 + by_0 + c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$ であることが成り立つ.