【理解】二項分布とは

ベルヌーイ分布・二項分布について

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ の定義

( $0 \leqq p \leqq1$ は成功確率)

定義(ベルヌーイ分布)

ベルヌーイ分布は, ベルヌーイ試行によって定義される確率分布です。

ベルヌーイ試行とは, 成功確率が $p$ である試行を1回行い, 成功の場合「1」, 失敗の場合「0」と定める試行です。

結果$0$$1$
確率$1-p$$p$$1$
確率分布

定義(ベルヌーイ分布の確率変数)

ベルヌーイ分布の確率変数 $X$ は $$\begin{aligned}P(X=0) &= 1-p \\ P(X=1) &= p \end{aligned}$$ で定まる確率変数です。$P$ は確率を定める関数です。

$X$$0$$1$
確率$1-p$$p$$1$
確率分布

表が出たら「1」, 裏が出たら「0」であるコイントスはベルヌーイ試行です。

公正なコインの場合 $B(1, 0.5)$ です。表が出る確率が $0.2$ の偏ったコインでは $B(1, 0.2)$ です。

期待値 $E[X]=p$

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う確率変数 $X$ の期待値が $E[X] = p$ であることを証明してみよう。

ベルヌーイ分布の期待値

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う確率変数 $X$ の期待値について

$E[X] = p$

証明.

期待値の定義通りに計算する.

$\begin{aligned}
E[X] &= \displaystyle 1 \cdot p + 0 \cdot (1-p) \\
&= \displaystyle p.
\end{aligned}$

確率分布 $S$ に従う確率変数 $X$ の期待値は次の通り: $$\displaystyle E[X] = \sum_{i=1}^n x_i p_i.$$

$X$$x_1$$\cdots$$x_n$
確率$p_1$$\cdots$$p_n$$1$
確率分布 $S$

ゆえに, $E[X] = p$ である.

例えば, 成功確率が $0.3$ のベルヌーイ分布 $B(1,0.3)$ では,

$Y$$1$$0$
確率$0.3$$0.7$$1$

期待値 $E[X]$ $= 1 \cdot 0.3$ $+ 0 \cdot 0.7$ $= 0.3$

です。

分散 $V[X]=p(1-p)$

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う確率変数 $X$ の分散が $V[X] = p(1-p)$ であることを証明してみよう。

ベルヌーイ分布の分散

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う確率変数 $X$ の分散について

$V[X] = p(1-p)$

証明.

確率変数の分散の定義通りに計算する.

ベルヌーイ分布の期待値は $E[X] = p$ である.

分散については

$$\begin{aligned}
V[X] &= \displaystyle (1-p)^2 \cdot p + (0-p)^2 \cdot (1-p) \\
&= \displaystyle p(1-p)
\end{aligned}$$

確率変数 $X$ の分散は: $V[X]$ $\displaystyle = \sum_{i=1}^n (x_i-E[X])^2 p_i $

$X$$x_1$$\cdots$$x_n$
確率$p_1$$\cdots$$p_n$$1$
確率分布

である.

ゆえに, $V[X] = p(1-p)$ である.

例えば, 成功確率が $p=0.3$ のベルヌーイ分布 $B(1,0.3)$

$Y$$1$$0$
確率$0.3$$0.7$$1$

について, 分散は

$V[X]$ $=1 \cdot 0.3$ $+ 0 \cdot 0.7$ $= 0.3$

です。

標準偏差 $\sigma[X]=\sqrt{p(1-p})$

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う確率変数 $X$ の標準偏差 $\sigma[X] = \sqrt{p(1-p)}$ であることを証明してみよう。

ベルヌーイ分布の標準偏差

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う確率変数 $X$ の標準偏差について

$\sigma[X] = \sqrt{X(1-p)}$

証明.

標準偏差の定義通りに計算する.

ベルヌーイ分布の分散は $V[X] = p(1-p)$ である.

標準偏差は, $\sigma[X] = \sqrt{V[X]}$ であったから,

$\sigma[X] = \sqrt{p(1-p)}$

である.

例えば, 成功確率が $p=0.3$ のベルヌーイ分布 $B(1,0.3)$

$Y$$1$$0$
確率$0.3$$0.7$$1$

について, $V[X] = 0.21$ なので,

$\sigma[X] = \sqrt{0.21} \fallingdotseq 0.46 $ です。

二項分布 $B(n,p)$

二項分布 $B(n,p)$ の定義

$P(X=r) = {}_n \mathrm{C}_rp^r(1-p)^{n-r}$

定義(二項分布)

二項分布 $B(n,p)$ は成功確率が $p$ の反復試行を $n$ 回行ったときの成功回数についての確率分布である。

二項分布

$0 \leqq r \leqq n$ とする。$n$ 回の試行のうち, $r$ 回成功する確率は $${}_n \mathrm{C}_rp^r(1-p)^{n-r}$$ であり, 確率分布表は次の通り。

回数確率
$0$$(1-p)^n$
$1$${}_n \mathrm{C}_1p(1-p)^{n-1}$
$2$${}_n \mathrm{C}_2p^2(1-p)^{n-2}$
$\vdots$$\vdots$
$n-1$${}_n \mathrm{C}_{n-1}p^{n-1}(1-p)$
$n$$p^n$
合計$1$
確率分布

10回コイントスをしたときの表の回数は二項分布

$\displaystyle B\left(10, \frac{1}{2} \right)$

です。

サイコロを5回転がしたときの5以上の目が出る回数は

$\displaystyle B \left(5, \frac{1}{3} \right)$

です。

※二項分布(英:Binomial distribution)

$X_1, \ldots , X_n \sim B(1,p)$ ならば $X_1 + \ldots +X_n \sim B(n,p)$

(ベルヌーイ試行を $n$ 回繰り返すと二項分布 $B(n,p)$ )

命題

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う $n$ 個の独立な確率変数を $X_1$ $\ldots$ $X_n$ とする.

確率変数の和 $X_1 + \ldots + X_n$ は二項分布 $B(n,p)$ に従う.

逆に, 二項分布に従う確率変数 $X$ は, $n$ 個の独立なベルヌーイ分布に従う確率変数の和として表すことができる.

$X=X_1 + \ldots + X_n$.

※ $0 \leqq r \leqq n$ について, $P(X_1 + \ldots + X_n = r)$ $={}_n\mathrm{C}_rp^r(1-p)^{n-r}$ である.

証明.

ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う独立な確率変数 $X_1$ $\ldots$ $X_n$ の和 $X_1 + \ldots + X_n$ と, 二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ が等しいことを示す.

ベルヌーイ分布に従う確率分布

$X_r$$0$$1$
確率$1-p$$p$$1$

■ 確率変数の和が二項分布に従うこと;

$1 \leqq r \leqq n$ について, $X_1 + \ldots + X_n=r$ とする. この方程式の解は

$(X_1,\ldots, X_r, X_{r+1}, \ldots, X_n)$ $=(1, \cdots, 1, 0, \cdots, 0)$

をはじめ, $n$ 個のうち $r$ 個の確率変数が $1$ を返している状況を表す. これらの解は ${}_n \mathrm{C}_r$ 個だけ存在して, おのおのが起こる確率は確率変数の独立性より $p^r(1-p)^{n-r}$ である.

ゆえに,

$P(X_1 + \ldots + X_n=r)$ $={}_n \mathrm{C}_r p^r(1-p)^{n-r}$

であり, この確率変数は二項分布 $B(n,p)$ に従っていることが分かる.

■ 二項分布に従う確率変数がベルヌーイ分布に従う確率変数の和で表せること;

$1 \leqq i \leqq n$ について, $n$ 回の試行のうち, $i$ 回目の試行の成功の可否を表す確率変数 $X_i$ を

・成功した場合 $X_i=1$,
・失敗した場合 $X_i = 0$

と定める. これは $B(1,p)$ に従う確率変数である.

$1 \leqq i,j \leqq n$ について, 二項分布の $i$ 回目の試行と $j$ 回目の試行は互いに影響しないので, $X_i$ と $X_j$ は独立である.

これらの和 $X_1 + \ldots + X_n$ は前述の通り, $B(n,p)$ に従う確率変数となる..

ゆえに, $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ は, $n$ 個の独立なベルヌーイ分布に従う確率変数の和として表すことができる.

例えば, $n=2$ のとき

$X_1, X_2$$0$$1$
$0$$(1-p)^2$$(1-p)p$$1-p$
$1$$p(1-p)$$p^2$$p$
$1-p$$p$$1$

$X_1 + X_2=2$ のときは, $(X_1, X_2)$ $=(1,1)$ のときのみであり確率は $p^2$ である。

$X_1 + X_2=1$ のときは, $(X_1, X_2)$ $=(1,0)$, $(0,1)$ であるから確率は $2p(1-p)$ である。

$X_1 + X_2=0$ のときは, $(X_1, X_2)$ $=(0,0)$ のときのみであり確率は $(1-p)^2$ である。

したがって, $X_1 + X_2$ は二項分布 $B(2,p)$ に従っています。

期待値 $E[X]=np$

二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ の期待値が $E[X] = np$ であることを証明してみよう。

公式

二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ について,

$E[X] = np$

証明.

二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ は, ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う $n$ 個の独立な確率変数 $X_1$, $\ldots$, $X_n$ の和で表すことができる:

$$X = X_1 + \cdots + X_n.$$

$1 \leqq i \leqq n$ について, $i$ 回目の試行が成功した場合 $X_i=1$, 失敗した場合 $X_i = 0$ と定める.

例えば, $X=n$ であった場合, 全ての $i$ で $X_i=1$ であるから $X_1 + \cdots +X_n = n$ となり $X=n$ と一致する. また, $X=2$ である場合, $X_1$ から $X_n$ のうち2個は, 成功したときに対応するもので, その値は $1$ である. 他のものの値は $0$ となるため, $X_1 + \cdots + X_n = 2$ で $X=2$ に一致する.

任意の添え字 $i$ について $E[X_i] = p$ である.

確率変数 $X_i$ はベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従うとき, $E[X_i] = p$ である.

$\begin{aligned}
E[X] &= E [X_1 + \ldots + X_n ] \\
&= E[X_1]+ \ldots + E[X_n] \\
&= p + \cdots + p \\
&= np.
\end{aligned}$

独立な確率変数 $X$ と $Y$ について $E[X+Y] = E[X] + E[Y]$ である.

ゆえに, $E[X] = np$ である.

例えば, 二項分布 $B(10,0.3)$ は, 成功確率が $0.3$ の試行を $10$ 回行う確率分布です。

1回試行した結果の期待値は $0.3$ で, $10$ 回試行した結果の期待値は

$E[X]$ $= 0.3 \times 10$ $= 3$

です。

分散 $V[X]=np(1-p)$

二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ の分散が $V[X] = np(1-p)$ であることを証明してみよう。

二項分布の分散

二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ について,

$V[X]=np(1-p)$

証明.

二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ は, ベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う $n$ 個の独立な確率変数 $X_1$, $\ldots$, $X_n$ の和で表すことができる.

$$X = X_1 + \cdots + X_n.$$

$1 \leqq i \leqq n$ について, $i$ 回目の試行が成功した場合 $X_i=1$, 失敗した場合 $X_i = 0$ と定める.

例えば, $X=n$ であった場合, 全ての $i$ で $X_i=1$ であるから $X_1 + \cdots +X_n = n$ となり $X=n$ と一致する. また, $X=2$ である場合, $X_1$ から $X_n$ のうち2個は, 成功したときに対応するもので, その値は $1$ である. 他のものの値は $0$ となるため, $X_1 + \cdots + X_n = 2$ で $X=2$ に一致する.

任意の添え字 $i$ について, $X_i$ はベルヌーイ分布 $B(1,p)$ に従う確率変数なので $V[X_i] = p(1-p)$ である.

$\begin{aligned}
V[X] &= V [X_1 + \ldots + X_n ] \\
&= V[X_1]+ \ldots + V[X_n] \\
&= p(1-p) + \cdots + p(1-p) \\
&= np(1-p).
\end{aligned}$

独立な確率変数 $X$ と $Y$ について $V[X+Y] = V[X] + V[Y]$ である.

ゆえに, $V[X] = np(1-p)$ である.

例えば, 二項分布 $B(10,0.3)$ は, 成功確率が $0.3$ の試行を $10$ 回行った結果の確率分布です。

1回試行した結果の分散は $0.21$ です。

$10$ 回試行した結果の分散は

$V[X]$ $= 0.21 \times 10$ $= 2.1$

です。

標準偏差 $\sigma[X]=\sqrt{np(1-p})$

二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ の標準偏差が $\sigma[X] = \sqrt{np(1-p)}$ であることを証明してみよう。

二項分布の標準偏差

二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ について,

$\sigma[X]=\sqrt{np(1-p)}$

証明.

二項分布 $B(n,p)$ に従う確率変数 $X$ の分散は

$V[X] = np(1-p)$

であった.

ゆえに, 標準偏差について $\sigma[X] = \sqrt{np(1-p)}$ である.

例えば, 二項分布 $B(10,0.3)$ は, 成功確率が $0.3$ の試行を $10$ 回行った結果の確率分布です。

分散は $V[X] = 2.1$ です。

標準偏差は $\sigma[X] = \sqrt{2.1}$ です。

二項分布の事例について

メレ氏の賭博 $B(24, 1/36)$

2個のサイコロを24回振るとき, 6のゾロ目が少なくとも1回出るかどうかに賭けるか否かという問題。

シュパリエ・ド・メレ氏はこの賭博に失敗した。

ゴルトンボード

準備中です。

すみません。

【コード】Pythonで二項分布を表示

二項分布のヒストグラムの表示

二項分布 $B(n,p)$ のヒストグラムをPythonで出力してみよう。

二項分布の出力

試行回数nと成功確率pによって二項分布 $B(n,p)$ を定める.

scipy.statsbinom.pmf()によって, 二項分布のそれぞれの確率を計算する.

matplotlib.pyplotで棒グラフ.barを描くことでヒストグラムを作成する.

Pythonコード.

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from scipy.stats import binom

# 二項分布の情報
n = 100  # 試行回数
p = 0.3  # 成功確率

# 二項分布を表示
x_values = np.arange(0, n + 1)
binomial_probs = binom.pmf(x_values, n, p)
plt.bar(x_values, binomial_probs, color='y', alpha=0.7, label = "Binomial-distribution")

# グラフの表示
plt.legend() #凡例表示
plt.xlabel("Number of Successes")
plt.ylabel("Probability")
plt.title(f"Binomial Distribution (n={n}, p={p})")
plt.grid(True)
plt.show()

二項分布の形状の比較

【Python】二項分布のグラフの形状を観察した!

二項分布を表示するコードを紹介します。 二項分布 $B(n, p)$ の試行回数 $n$ と成功確率 $p$ を変えて、分布の形の違いを観察しました。 目次二項分布のコード【Python】…

まとめノート

「二項分布」とは

硬貨を何枚か同時に投げて表が出る回数を表す確率分布のこと。

記号

試行回数 $n$, 確率 $p$ の二項分布

$B(n, p)$

と書く.

A. 二項分布の確率分布

確率 $p$ の事象が $k$ 回起こる確率は次の通り:$$P(X=k) = {}_n \mathrm{C}_k \cdot p^k \cdot (1-p)^{n-k}$$

B. ベルヌーイ分布

$0$ か $1$ が起こることをベルヌーイ試行という. ベルヌーイ分布は $B(1,p)$ であり, 確率変数を $Y$ とすれば, 期待値 $E[Y] = p$, 分散 $V[Y]=p(1-p)$ である.

C. 期待値と分散

①$E(X) = np$

②$V(X) =np(1-p)$

D. 二項分布の正規分布近似

二項分布 $B(n,p)$ は $n$ が大きいとき, 正規分布 $N(np, np(1-p))$ に近似できる.

ポイント解説

A

確率分布は $0 \sim n$ の範囲で,

$np$ 周辺でピークの山型のヒストグラム

になる.

B

ベルヌーイ試行の確率分布:

$Y$$1$$0$
$P(Y)$$p$$1-p$$1$

ベルヌーイ分布に従う確率変数の和 $X=Y_1 + \cdots + Y_n$ は $B(n,p)$ に従う.

C

$P(X=k)$ の確率分布から直接証明する, もしくはベルヌーイ試行の繰り返しで証明する.

Excel

4つの引数を入力;

BINOM.DIST(成功回数 $k$, 試行回数 $n$, 成功確率 $p$, 関数形式)

関数形式;TRUE→下側累積確率, FALSE→ $P(X=k)$ の値を出力する.

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