- 目次
- 理解
- 実例
- コード
- まとめ
【理解】等比数列の数学的解説
等比数列の定義と一般項について
$\displaystyle \frac{a_{n+2}}{a_{n+1}} = \frac{a_{n+1}}{a_n}$
$\displaystyle a_{n+1} = r a_n$
定義・漸化式(等比数列)
数列 $\{ a_n \}_{n\in \mathbb{N}}$ が $$\displaystyle \frac{a_{n+2}}{a_{n+1}}=\frac{a_{n+1}}{a_n}$$ を満たすとき, 等比数列という. この一定の比を $r \neq 1$ と置くと, 任意の自然数 $n$ について $$\displaystyle \frac{a_{n+1}}{a_n} = r$$ と表せる. 定数 $r$ を公比という.
例えば,
$1$, $2$, $4$, $8$, $16$, $32$, $64$, $128$, $\cdots$
は等比数列です。
等比中項の性質( $a, b, c$ は $0$ ではない)
$b^2=ac$ $\Leftrightarrow$ $a, b, c$ が等比数列
$a=a_n$, $b=a_{n+1}$, $c=a_{n+2}$ とする。
等比数列の定義である
$\displaystyle \frac{a_{n+2}}{a_{n+1}} = \frac{a_{n+1}}{a_n}$
は, $\displaystyle \frac{c}{b} = \frac{b}{a}$ であり, この式は
$b^2=ac$
と同値である。
$a_n = a r^{n-1}$
植木算の考え方を使う.
$a_n$ は,初項 $a_1$ に 公比を $(n-1)$ 回かければ良いので, $$a_n = a_1 r^{n-1}$$ になります。
等比数列の和の公式
$\displaystyle \sum_{k=1}^n a_1r^{k-1} = \frac{a_1(r^n-1)}{r-1}$
等比数列 $\{ ar^{n-1} \}_{n \in \mathbb{N}}$ について, 和の公式を導出・証明してみよう。
公式
$\displaystyle \sum_{k=1}^n ar^{k-1}= \frac{a(r^n-1)}{r-1}$
ただし, $r\neq1$ とする.
公式のイメージ
$3 + 6 + 12 + 24 = 45$ の両辺を2倍すると $6 + 12 + 24 + 48 = 90$ です。同じ数がうまく消えるように, 2式を引くと
$$\begin{aligned}
90 & = \phantom{rrrr} 6 + 12 + 24 + 48 \\
45 & = 3 + 6 + 12 + 24 \\ \hline
45 &= -3 \phantom{rrrrrrrrrrrr} +48
\end{aligned}$$
という感じの計算ができる。
公式. $r \neq 1$, $a$ を定数とする. $\displaystyle \sum_{k=1}^n ar^{k-1}= \frac{a(r^n-1)}{r-1}$ である.
$S = a + ar + ar^2 + \cdots + ar^{n-1}$ と置く.
両辺を $r$ 倍した, $rS = ar + ar^2 + \cdots + ar^n$ の両辺から元の式の両辺をそれぞれ引く.
左辺の差は $(r-1)S$ である. 右辺の差は $ar^n - a$ となる.
$$\begin{align}
rS & = \phantom{rrrr} ar + \cdots + ar^{n-1} + ar^n \\
S & = a + ar + \cdots + ar^{n-1} \\ \hline
(r-1)S &= -a \phantom{rrrrrrrrrrrrrrrrr} +ar^n
\end{align}$$
よって, $(r-1)S = a(r^n-1)$ を得る. $r \neq 1$ より $\displaystyle S = \frac{a(r^n-1)}{r-1}$ を得る.
ゆえに, $\displaystyle \sum_{k=1}^n ar^{k-1}= \frac{a(r^n-1)}{r-1}$ である.
例えば, 等比数列 $\{ 3 \cdot 2^{n-1} \}_{n}$ について, 初項から第4項目までの和は $3 + 6 + 12 + 24$ $=45$ です。
公式でも $\displaystyle \frac{3(2^4-1)}{2-1}$ $= 45$ です!
等比数列の和の公式の計算テクニック
$r \neq 1$ のとき, 等比数列の和の公式 $\displaystyle \sum_{k=1}^nr^{k-1} = \frac{r^n-1}{r-1}$ を使うときの計算テクニックを習得してみよう。
等比数列の公式のコツ
①末項の調整
$\displaystyle \sum_{k=1}^{\square} r^{k-1} = \frac{r^\square-1}{r-1}$
②初項の調整
$\displaystyle \sum_{k=\square}^n r^{k-1} = \sum_{k=1}^n r^{k-1} - \sum_{k=1}^{\square -1}r^{k-1}$
③指数の調整
$\displaystyle \sum_{k=1}^n r^{\square} = r^{\triangle}\sum_{k=1}^n r^{k-1}$
ただし, $r\neq1$ とする.
例えば, $\displaystyle \sum_{k=3}^{10} 3^{k+1}$ の場合, $$\displaystyle 9\sum_{k=1}^{10} 3^{k-1} - 9\sum_{k=1}^{2} 3^{k-1}$$ とすれば, 公式が使える形になります!
計算のセンス
等比数列の初項が $3^{3+1} = 81$,
項数が $10-(3-1)=8$ と分かるので,
$\displaystyle \sum_{k=1}^83^{k-1}$ $\displaystyle = \frac{3^8-1}{3-1}$
としてもよい。
【実例】世の中で利用されている等比数列
複利法( 投資額 $a$, 利子率 $r$ )
$a(1+r)^n$
複利式での資金の変化を考えてみよう。例えば, 利率が $10\%$ で $10$ (万)円を投資した場合, $n$ 年後には $10 \times (1.1)^n$ 万円になります。
基本の解法
利子率 $r$, 投資額 $a$とする。複利式で $n$ 回の利子を受け取った後の元利合計 $a_n$ は次の通り: $$a_n = a (1+r)^n$$
$n$ 回で受け取った利子の合計は $a(1+r)^n - a$ である。
複利式は、ある年度に受け取った利子にも、その次年度に利子が付くという方式である。
年利で考えると(次年度の利子)=(今年度までの元利合計)×(利率)である。
これより(次年度の元利合計)=(今年度までの元利合計)×(1+利率)が成り立つ。
例題. 複利の利子率が $10\%$, 初回の投資額を $10$ (万)円 とする。$10$ 回目の利子を受け取った後の元利合計および利子はいくらか。
与えられた条件から $n$ 回目の利子を得た後の元利合計を $a_n$ とすると $a_n = 10 \times (1.1)^n$ (万) である。
$r = 0.1$, $a = 10$(万).
$n=10$ のとき $a_{10} = 10 \times (1.1)^{10}\fallingdotseq 25.9374$ である。
ゆえに, 10回目の利子を受け取った後の元利合計は 259,374円である。
投資金額は 10万円であるので、受け取った利子は $25.9374-10$ $=15.9374$ (万) である。
ゆえに10回で受け取った利子の総額は 159,374円である。
単利式の場合, 10回で受け取る利子の総額は 10万円である。
複利の利子率が $10\%$, 投資額を $10$ (万)円 とします。単位は(万)として年利で考えます。
1年後の利子は $10 \times 0.1$ です。
1年後の元金と利子の合計は: $10 \times (1+0.1)$ $= 10 \times 1.1$.
2年後の利子は $(10 \times 1.1) \times 0.1$ です。
2年後の元金と利子の合計は: $(10 \times 1.1) \times (1 + 0.1)$ $= 10 \times (1.1)^2$.
3年後の利子は $(10 \times (1.1)^2) \times 0.1$ です。
3年後の元金と利子の合計は: $(10 \times (1.1)^2) \times (1+0.1)$ $= 10 \times (1.1)^3$.
この規則で $n$ 年後の元利合計が分かりますね!
音階
ド・ド#・レ・レ#・ミ・ファ・ファ#・ソ・ソ#・ラ・ラ#・シ・ド
の12段階の振動数(周波数)は等比数列をなしている。
ド~ドまでの振動数の比は $2$ である。
【コード】Pythonで等比数列を出力
等比数列の出力 (seq
を作成)
等比数列をPythonで計算してみよう。
等比数列の作成
初項a
, 公比r
, 項数n
を指定する。
i
を $1$ から $n$ の範囲の変数として等比数列の式 $a r^{i-1}$ に繰り返し代入していくことで, リスト[]
に等比数列の初項から第 $n$ 項までを格納する。
Pythonコード入力例. 初項 $1$, 公比 $2$ の等比数列を初項から第 $10$ 項まで出力する。
a = 1
r = 2
n = 10
seq = [a * r ** (i - 1) for i in range(1, n + 1)]
print("等比数列:", seq)

数列の折れ線グラフの作成matplotlib.pyplot(seq)
Pythonのリストから折れ線グラフを作成する方法を習得しよう。
説明
グラフを描写するためにmatplotlib
モジュールを利用する。
matplotlib.pyplot
のplot()
関数は, 引数にリストを入れることで折れ線グラフをを作成する。
Pythonコード. リスト[2, 5, 3, 4, 6, 9]
の折れ線グラフを作成する。
import matplotlib.pyplot as plt
lst = [2, 5, 3, 4, 6, 9]
# 折れ線グラフを描く
plt.plot(lst)
# グラフのタイトル・ラベル
plt.title("Line Graph")
plt.xlabel("Index")
plt.ylabel("Value")
# グラフの表示
plt.show()

等比数列の和の出力sum(seq)
Pythonのリスト[]
の合計を出力するsum()
関数の使い方を習得しよう。
説明
sum()
関数は、引数にリストを入れることで、リストの要素の合計値を出力する。
Pythonコード. [5, 7, 3, 4, 8]
の要素の合計値を計算して出力する。
lst = [5, 7, 3, 4, 8]
sum(lst)

等比数列の和の出力(公式の利用)
等比数列の和をPythonで計算してみよう。
等比数列の和の計算
初項a
, 公比r
, 項数n
を指定する。
等比数列の和の公式 $a(r^n-1)/(r-1)$ を計算することで合計total
を求める。
Pythonコード入力例. 初項 $1$, 公比 $2$ の等比数列の初項から第 $10$ 項までの和を出力する。
a = 1
r = 2
n = 10
total = a * (r**n - 1) // (r -1)
print("等比数列の和:", total)

等比数列の和の数列の出力total=list(accumulate(seq))
Pythonのリストの初めからi
番目までの和を並べて新しいリストを作るitertools.accumulate()
関数の使い方を習得しよう。
説明
itertools
モジュールを利用する。
accumulate()
関数は, 引数にリストを入れることで, そのリストの0
番目からi
番目までの要素の合計値をi
番目とするリストを作成する。
ただし, list()
関数を適用しなければ, 実際のリストとして出力されない。
Pythonコード. [2, 7, 5, 3]
のリストにaccumulate()
関数を適用し新しいリストを作る。
from itertools import accumulate
lst = [2, 7, 5, 3]
result = list(accumulate(lst))
print(result)

数列の特定の値のindexの取得seq.index()
total.index()
Pythonのリストの特定の要素が何番目からあるかを出力するindex()
関数の使い方を習得しよう。
説明
index()
関数は, リスト名.index()
として引数に何番目かを検索する要素を入力することで, その要素が何番目にあるかを出力する。
※注1: 検索する要素が複数ある場合, はじめにあるものの番号が出力される。
※注2: リストは $0$ 番目からカウントするため注意する。
Pythonコード. リスト[2, 7, 5, 3]
で5が何番目にあるかを出力する。
lst = [2, 7, 5, 3]
index_5 = lst.index(5)
index_5_1 = lst.index(5)+1
print("5が何番目か(0からカウント):", index_5)
print("5が何番目か(1からカウント):", index_5_1)

まとめノート
「等比数列」とは
隣り合う数の比がいつも等しい数列のこと。
定義
任意の $n$ について,
$\displaystyle \frac{a_{n+2}}{a_{n+1}}=\frac{a_{n+1}}{a_n}$
が成り立つ.
漸化式
公比を $r$ とおくと, $a_{n+1} = r a_n$ が得られる.($r \neq 1$)
A. 等比数列の一般項
$a_n=a_1 r^{n-1}$
B. 等比数列の和
$r\neq 1$ のとき, $\displaystyle S_n = \sum_{k=1}^n a_1r^{k-1} = \frac{a_1(r^n-1)}{r-1}$.
C. 等比中項の関係
実数 $a$, $b$, $c$ について, この順で等比数列である $\Leftrightarrow$ $b^2 = ac$.
ポイント解説
例
$1$, $2$, $4$, $8$, $16$, $\cdots$(2倍)
・漸化式:$a_{n+1} = 2 a_n$
・一般項:$a_n = 2^{n-1}$
・和の式:$S_n = 2^n-1$
B
$S_n= a+ ar +\cdots + ar^{n-1}$ について, $rS_n - S_n = ar^n - a$ が成り立つことから導出できる。
初項の調整
$\displaystyle \sum_{k=\square}^n r^{k-1} = \sum_{k=1}^n r^{k-1} - \sum_{k=1}^{\square -1}r^{k-1}$
末項の調整
$\displaystyle \sum_{k=1}^{\square} r^{k-1} = \frac{r^\square-1}{r-1}$
指数の調整
$\displaystyle \sum_{k=1}^n r^{\square} = r^{\triangle}\sum_{k=1}^n r^{k-1}$
C
等比数列の定義 $c/b = b/a$ と同値。