数学Iの授業で三角比を伝えると思います(伝えられると思います)。

いきなり、サインコサインという暗号を伝えても意味不明になるだけです。(三角比の定義を何の背景もなく伝えるという意味です。)

まず、歴史的経緯を伝えて、三角比の意義を伝えることが大切です。数学Iの三角比の範囲の一つの目標は山の高さを測る(だけの)ことです。これは凄いことですが、ここで終わるだけだと、何の意味があるの?となってしまっても仕方ありません。

波動を表現する三角関数という数学IIの先の話も見据えさせて、電波や音波などの身近にあるけど目に見えないものを計算できる概念であることを伝えておくことが良いと思います。

この記事では、こまかい説明は省略して、三角比(や三角関数)の単元の内容を俯瞰できるようにしました。公式も一通り整理しておきましたので、暗記の確認にもご利用できます。

図形の調査とユークリッド(三角比以前)

いろいろな「図形」があります。基本的な形の正方形, 正三角形から話を始めます。そして後で円も考えます。

図形と人々の生活

人間は太古の昔から, 土地の測量や, 天体の動きから暦の計算などをしてきました。最も基本的な形である「三角形」や「円」をモデルとして, 世界を表現しました。この三角比の単元は, このような「図形」たちの角度を扱います。

図形とユークリッド

古代ギリシャのユークリッドは, 当時までに発見されていた図形の性質を体系化し, Euclid原論を執筆した。中学数学の内容の図形の部分は全てこの書籍で調査された内容です。

三角形に成り立つ代表的な性質

三角定規(三角比の基本)

図形を調べるには何が最も役に立ちますか?定規ですね。小学生の時に貰った2つの三角定規を思い出そう。なぜ, この2種類の形であるかは, 最も基本的な形である「正方形」と「正三角形」を半分にしてできる図形であるからです。

三角定規が基本的な形である理由

直角三角形とピタゴラス(三角比の準備)

三平方の定理とは, 直角三角形に対し, $a^2 + b^2 = c^2$ が成り立つことを言います。

三平方の定理

ピタゴラスの定理と呼ばれたり, 鈎股弦(こうこげん)の法とも呼ばれます。

この定理の発見により, (直角)三角形の辺と辺の関係が解明されました。次に, 辺と角度の関係を解明したいと思うのは自然なことです。

三角比の表とプトレマイオス(三角比の導入)

三角比という便利な記号の取り決めを行います。

三角比という記号の定義

三角比の定義

この暗記をダンスで覚える方法はこちらです。

三角比がなんの役に立つの?

古代ギリシャでは, ピラミッドの測量(幾何学)をしたり, 星の軌道を測量(天文学, 暦学)に利用していました。

ヒッパルコスという人物が文献上最も古い研究者であります。

アルマゲスト

古代ローマのプトレマイオス(トレミー)が執筆した天文学書『アルマゲスト』には, 三角比の値が計算されています。この三角比の表とは教科書の最後に載っている三角比の表のことで。

三角比の性質①

$45^{\circ}$ から $90^{\circ}$までの三角比は, $45^{\circ}$ 以下の三角比で表すことができる。

  • $\sin (90^{\circ} - A) = \cos A$
  • $\cos (90^{\circ} - A) = \sin A$
  • $\tan (90^{\circ} - A) = \frac{1}{\tan A}$

大切なこと(三角比の根幹)

相似な三角形 ABC と A'B'C' では, 角度 $\theta$ は同じですが, 辺の長さが異なります。これでも大丈夫なのでしょうか?相似比が $k$ だとしましょう。つまり, $a' = ka$, $b' = kb$ , $c' = kc$ が成り立つとします。このとき, 例えば,

$$\frac{b'}{c'} = \frac{kb}{kc} = \frac{b}{c} = \sin \theta$$

なので, 相似な三角形ならば, どんなものを考えても三角比は上手く決まります。詳しい解説はこちらです。

三角比に成り立つ性質(三角比の相互関係)

一般の角度における三角比の定義を行い, これらに成り立つ関係式(相互関係)を調べます。

一般の角度における三角比の定義

相似な三角形のどれを考えても三角比は同じだから, 斜辺 $c$ が $1$ の単純なものだけ考える $\leadsto$ 全ての直角三角形は半径 $1$ の円の第一象限に乗る。

三角比の相互関係

上で取り決めた3つの三角比に相互に成り立つ関係式がある:

  • $\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1$
  • $\tan \theta = \frac{\sin \theta}{\cos \theta}$
  • $1 + \tan^2 \theta = \frac{1}{ \cos^2 \theta}$

相互関係(1)の証明

例として式(1)を証明します:

便宜上, $a = \cos \theta$ と $b = \sin \theta$ とおく。

点 $(a, b)$ は単位円 $x^2 + y^2 = 1$ 上にあるので, $a^2 + b^2 = 1$ が成立する。

したがって, $\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1$ である。$\blacksquare$

鈍角の三角比を決める(三角比の拡張)

角度が $0^{\circ} < \theta < 180^{\circ}$ の場合を考えましょう。

三角比による図形の計量のための定理

三角形 ABC について次の関係が成り立つ。余弦定理と正弦定理を使うと, ある角度と辺の長さが既知であると, 残りの角度と辺の長さを完全に求めることが可能です。三角形の面積は, サイン(角度)を利用して求めることも可能です。

三角比の性質②(鈍角の三角比)

鈍角( $90^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}$ )の三角比を調べるには, 次の関係式が使える。

  • $\sin \theta = \sin (180^{\circ} - \theta)$
  • $\cos \theta = - \cos (180^{\circ} - \theta)$
  • $\tan \theta = - \tan (180^{\circ} - \theta)$

波動とフーリエ(一般の三角比と三角関数)

$0^{\circ} \leqq \theta \leqq 180^{\circ}$ 以外の三角比を求めるためには, 次の関係を利用すればよい。$180^{\circ}$ までの三角比に全て変換できる。

三角比の性質③

$\theta$ が負のとき

  • $\sin \theta = - \sin (- \theta)$
  • $\cos \theta = \cos (- \theta)$
  • $\tan \theta = - \tan (- \theta)$

三角比の性質④

$\theta$ が $360^{\circ}$ を越えるとき

  • $\sin \theta = \sin (\theta \ - 360^{\circ} \times n)$
  • $\cos \theta = \cos (\theta \ - 360^{\circ} \times n)$
  • $\tan \theta = \tan (\theta \ - 360^{\circ} \times n)$

三角比の性質⑤

$\theta$ が$180^{\circ}$ を越えるとき

  • $\sin \theta = - \sin (\theta \ - 180^{\circ})$
  • $\cos \theta = - \cos (\theta \ - 180^{\circ})$
  • $\tan \theta = \tan (\theta \ - 180^{\circ})$

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三角比の合成(干渉)

二つの波 $p \sin x$ と $q \cos \theta$ がぶつかったとき, それは波(サインの形)になる。

$$p \sin x + q \cos x = r \sin (x + \alpha)$$

ただし, 次で $r$ と $\alpha$ を決める。

  • $r = \sqrt{p^2 + q^2}$
  • $\sin \alpha = \frac{q}{\sqrt{p^2 + q^2}}$
  • $\cos \alpha = \frac{p}{\sqrt{p^2 + q^2}}$

フーリエ級数展開

どんな波(周期関数のグラフ)でも, サインの形の波(正弦波)とコサインの形の波(余弦波)のたくさんの和で表現できる。周期という性質が大切です。複雑な波を解析できる $\leadsto$ もちろん物理学で利用されている。

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三角関数の加法定理

加法定理の利用目的と, 2倍角の公式, 半角の公式を整理しています。

三角比と三角関数の整理表まとめ

こまかい解説は省略し、単元の概略を示しています。細かい説明とともに、大きな流れを解説することも大切ですので、そのための一助となりましたら幸いです。

ここまで、お読みいただきありがとうございます。

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