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- 定理
- 位相
オイラー標数
基本
オイラー数は, 多面体の頂点と辺、面の情報から計算できる位相不変量である.
定義
多面体 $M$ について, 頂点の個数 $v$, 辺の本数 $e$, 面の枚数 $f$ であるとき, 次の値をオイラー数という:$$\chi(M) = v - e + f$$
オイラーの多面体定理
凸多面体 $M$ について,次が成り立つ:
$\chi(M)= 2$.
定理
種数 $g$ の閉曲面 $S$ について,向きづけ可能な曲面では $\chi(S) = 2-2g$ であり,向きづけ不可能な曲面では $\chi(S) = 2-g$ である.
計算
曲面 | $\chi$ | 種数 $g$ | 表裏 |
---|---|---|---|
凸多面体 | $2$ | $0$ | ◯ |
球面 | $2$ | $0$ | ◯ |
トーラス | $0$ | $1$ | ◯ |
射影平面 | $1$ | $1$ | × |
クラインの壺 | $0$ | $2$ | × |
閉曲面(2次元多様体)については,
オイラー数によって完全に分類可能である.
オイラー数について
多面体の頂点の個数 $v$,辺の本数 $e$,面の枚数 $f$ について,$\chi = v-e+f$ をオイラー数という。
正多面体のオイラー数
問い
正多面体は5種類だけ存在する。
これらのオイラー数は?
定理
すべてオイラー数は $2$ である。
正多面体 | 頂点 | 辺 | 面 | オイラー数 |
---|---|---|---|---|
正四面体 | 4 | 6 | 4 | 2 |
立方体 | 8 | 12 | 6 | 2 |
正八面体 | 6 | 12 | 8 | 2 |
正十二面体 | 20 | 30 | 12 | 2 |
正二十面体 | 12 | 30 | 20 | 2 |
多面体のオイラー数
その他,多面体に対してもオイラー数は定義される。
特に,オイラーの多面体定理が重要である。
証明をすると長くなるので,割愛する。
オイラーの多面体定理
凸多面体 $M$ について,$\chi(M)= 2$ である。
曲面のオイラー数の例
曲面のオイラー数
問い
グニョグニョの立体にも、オイラー数があるんだって!
命題
- 球面 $\mathbf{S}^2$
- トーラス$\mathbf{T}$
- 射影平面 $\mathbf{P}^2$
- クラインの壺 $\mathbf{K}^2$
球面のオイラー数
具体例
球面 $\mathbf{S}^2$ について,$\chi(\mathbf{S}^2) = 2$.
展開図で確認

展開図で確認する。頂点が3個,辺が2本,面が1枚なので,球面のオイラー数は2です。
$$\chi(\mathbf{S}^2) = 3 - 2 + 1 = 2.$$
トーラスのオイラー数
展開図で確認

展開図で確認する。頂点が1個,辺が2本,面が1枚なので,トーラスのオイラー数は0です。
$$\chi(\mathbf{T}) = 1 - 2 + 1 = 0.$$
射影平面のオイラー数
具体例
射影平面 $\mathbf{P}^2$ について,$\chi(\mathbf{P}^2) = 1$.
展開図で確認

展開図で確認する。頂点が2個,辺が2本,面が1枚なので,実射影平面のオイラー数は1です。
$$\chi(\mathbf{P}^2) = 2 - 2 + 1 = 1.$$
クラインの壺のオイラー数
具体例
クラインの壺 $\mathbf{K}$ について,$\chi(\mathbf{K}) = 0$.
展開図で確認

展開図で確認する。頂点が1個,辺が2本,面が1枚なので,クラインの壷のオイラー数は0です。
$$\chi(\mathbf{K}) = 1 - 2 + 1 = 0.$$
位相不変量としてのオイラー数
オイラー数は位相不変量で,多面体の空洞や穴がいくつあるかを数えることができます。
曲面のオイラー数
問い
種数との関係?
これらのオイラー数は?
定理
定理. 種数 $g$ の閉曲面 $S$ について,向きづけ可能な曲面では $\chi(S) = 2-2g$ であり,向きづけ不可能な曲面では $\chi(S) = 2-g$ である。
向きづけ可能とは表裏が区別できる曲面で,向きづけ不可能とは表裏の区別できない曲面のことである。
計算の仕方
曲面は,三角形分割(もしくはセル分割)できる。曲面を多面体と見なし,オイラー数を定義することができる。
※三角形分割,セル分割に依らずにオイラー数の値は決定する。
曲面の展開図(セル分割)を利用して,オイラー数を計算する。
具体例で検証
曲面 | オイラー数 $\chi$ | 種数 $g$ | 表裏 |
---|---|---|---|
凸多面体 | 2 | 0 | ◯ |
球面 | 2 | 0 | ◯ |
トーラス | 0 | 1 | ◯ |
射影平面 | 1 | 1 | × |
クラインの壺 | 0 | 2 | × |
凸多面体・球面・トーラスについては,向きづけ可能であり,オイラー数と種数の関係式 $\chi = 2-2g$ に対応している。
射影平面・クラインの壺については,向きづけ不可能であり,オイラー数と種数の関係式 $\chi = 2-g$ に対応している。■